統合失調症で障害基礎年金2級を受給できた場合
請求者
- 男性(50代)
- 傷病名:統合失調症
- 年金種類と等級:障害基礎年金2級
相談時の状況
- 請求者様ご本人にご来所いただき「自身で障害年金請求手続きをしたところ、書類が返された。対処法を教えてほしい」との相談をお受けしました。
サポート内容
返戻の原因の確認
- ご自身で準備された請求書類で返戻された原因を確認いたしました。
- 受診状況等証明書(初診日証明)に前医受診の記載があり、初診日を特定できていませんでした。
※返戻:窓口で受理された書類が、審査の段階で書類不備と判断され、請求者に戻されること。
→提出した受診状況等証明書に記載された前医へ問い合わせたところ、カルテ保存期間を過ぎており、書類が残っていませんでした。
初診日の特定
請求者様の受診歴を確認いたしました。
受診歴
- 不眠症状で受診し、1回の投薬治療で症状が軽減した。
- 以降、時折不眠症状はあるものの10年ほど受診せず、欠勤なく就労していた。
- 不眠の症状が強くなったため受診。
- 症状が重い時のみ受診していたため、中断期間がある。
不眠症状は統合失調症の初期に現れることがある症状です。
- 最初に不眠症状で受診してから、次に不眠症状で受診するまでに10年間未受診期間がある。
- 社会的治癒後の受診日を障害年金上の「初診日」として請求いたしました。
→障害年金認定基準にある「相当因果関係」があると認められる場合があります。
※相当因果関係:前の疾病または負傷がなかったら、後の疾病が起こらなかっただろうという考え方です。
→「社会的治癒」の状態にあったと考えられる場合があります。
※社会的治癒:社会保障(障害年金、傷病手当金)制度独自の概念です。医学的な治癒とは別に、安定した社会生活をある程度長期間送ることが可能な状態を社会通念上治癒したものと認める、という考え方です。
納付要件
- 年金事務所にて年金保険料納付状況を確認いたしました。
- 障害年金受給の条件として、初診日(病気やケガの為に初めて受診した日)の前日までに保険料を納める必要があります。納付要件は下記のいずれかです。
- 原則は「3分の2要件」
- 特例として「直近1年要件」
- 請求者様には上記納付要件を確認する上で、注意する点がありました。
→平成3年4月1日前の学生(昼間学生)の期間があり、この期間に学生として任意加入していない場合は、「被保険者期間」に含まれないため、未納・滞納扱いにはなりません。そのため「3分の2要件」を満たしていました。
公的年金加入日から、初診日の前々月までの加入期間のうち、その3分の2以上について、保険料が納付または免除されていること。
初診日が65歳未満で、その前々月までの1年間に保険料の未納がないこと。
結果
障害基礎年金2級(年間約78万円、加給あり)認定
請求を終えて
- 今回は「社会的治癒」「納付要件の確認」など、取り扱いが困難な事例でした。
- 初診日、納付要件については、障害年金請求にあたっては最も重要な部分です。
- 条文の内容を理解し、正確に判断する必要があります。上記サポート内容も、今回のケースに適用できた事例です。
- 請求が困難なケースについては、専門家にご相談ください。