知的障害の概要や、それによる障害年金の認定のポイント
●知的障害とはどういう状態をいうのか●
知的障害とは、知的機能及び適応行動に制約があり、発達期(おおむね18歳未満)に生じた障害の状態のことを言います。
事故の後遺症や認知症などでも知的機能及び適応行動に制約がありますが、こういったケースでは知的障害の名称は使いません。後発的なものではなく、先天的(生まれつき)に又は遅くとも18歳までにそのような状態にある場合に知的障害という病名が使われます。
知的障害に該当するか否かは、ある程度客観的に決まります。標準化された知能テストで、2標準偏差値(平均点からどれくらい離れているかを示す指標)以上低いと知的障害と判断されます。
知的障害は、一般的には、以下の軽度、中度、重度の3段階が定義されています。
- 軽度:自分の身の回りの処理ができ、日常生活にほとんど支障がない。
- 中等度:精神年齢が8歳〜9歳、知能指数は30〜50程度。新しい事態への適用は困難であり、社会生活で他人への援助を必要とするが、訓練によっては自立可能。
- 重度:成人しても3歳児程度の知能を超えられない状態
厚生労働省が定める精神の障害に関する障害認定基準の認定要領には、知的障害による障害認定の要領が定められており、知的障害で障害年金が請求できることは明らかです。
また、2009年度に行われた統計調査によると、同年度の障害年金の総受給者数は1,796千人で、そのうちの394千人(27.2%)が知的障害を原因とする障害年金の受給者でした。従って、障害年金受給者の4人に1人以上は知的障害によるものということになります。
●知的障害による障害の障害認定のポイント●
障害認定基準における認定要領では、知的障害の認定にあたっては、知能指数のみに着眼することなく、日常生活の様々な場面における援助の必要度も考慮して、総合的に判断するものとされています。
従って、知能指数が高い軽度の方でも、日常生活能力が明らかに普通の方よりも劣る場合には、障害年金を受給できる場合があります。
また、知的障害をお持ちの方は療育手帳を所持されている方も多いですが、療育手帳を持っているから障害年金が受給できるというわけではありませんし、療育手帳を持っていないから障害年金が受給できないわけでもありません。
療育手帳の等級と障害年金の等級の認定は全く別物なので、療養手帳が〇級だから、〇級の障害年金を受け取ることができるという判断はできません。
就労されている知的障害の方については、就労している事実をもって直ちに生活能力が高いと判断せずに、就労している仕事の内容、種類、職場で受けている援助の内容、他の従業員とのコミニケーションの状態を勘案し、総合的に判定すべきとされています。
このことから、就労しているからと言って直ちに障害年金は受給できないと判断するのではなく、明らかに一般の従業員と異なる方法で就労している場合には、就労している場合であっても障害年金が受給できることがあります。