弁置換で障害厚生年金3級を受給できた事例
ご相談者
- Fさん男性60代
- 傷病名:大動脈弁狭窄症
- 年金種類と等級:障害厚生年金3級
ご相談時の状況
請求者ご本人にご来所いただき、これまでの経緯を詳細にお伺いしました。
- 数年前、会社の定期健康診断を受診した結果、心雑音の指摘があったが、自覚症状がなく、様子見をした。翌年の健康診断では、異常の指摘なくそのまま未受診。
- あくる年の健康診断で再度心雑音の指摘を受けた。この頃に息切れの自覚症状があった。
- 医療機関を受診したところ、大動脈弁狭窄と診断され、大きな病院にて治療を受けるよう、紹介状が作成された。なお、初診日時点は就労中で、厚生年金加入中であった。
- 総合病院を受診し精査したところ、中等度以上のAS(大動脈弁狭窄症)と診断。いずれ弁置換術適応となるが、今はまだ早いとのことで通院下での様子見の方針となった。
- 約一年後、重度大動脈弁狭窄症となり、弁置換術を受けた。
- 弁置換をすると障害年金がもらえるとネットで見たが、自分にも受給できる見込みがあるのか。
- 身体障害者手帳 1級所持
相談から請求までのサポート
人工弁に置換した場合の障害年金請求のポイントは3つ!
1.人工弁に置換したら、何級に認定されるのですか?
人工弁に置換している場合は、原則障害等級3級に認定されます。
ただし、3級にしか認定されないということではなく、人工弁置換術を受けて6カ月以上経過してもなお、異常所見や検査結果の数値がある場合、日常生活への制限の度合いによっては、上位等級(2級)になる可能性もないわけではありませんので、障害認定基準に照らし、注意深く検討する必要があります。
2.人工弁に置換したら、いつ障害年金の請求ができるのですか?
障害年金は、原則、初診日から1年6か月後の「障害認定日」の症状に応じて障害等級が認定されますが、人工弁に置換した場合には
- 人工弁置換日
- 初診日から1年6か月した日
のいずれか早い日を障害認定日として、障害年金を請求することが可能です。人工弁に置換された場合には、1日も早く障害年金の請求手続きをされることが重要です。
3.働いていると人工弁置換で障害年金を受給できないのですか?
障害年金の障害等級認定にあたっては、日常生活や労働にどのような支障があるのか、ということが重視されます。
人工弁置換術を受けられた方は、術後の療養を経て職場復帰される方も多く、弊所における受給事例においても、皆さんお仕事に復帰されている方の請求事例がほとんどです。
そのため、「いかに労働や日常生活に支障があるのか」「周囲からどのような配慮を受けて就労しているのか」「日常生活や労働の場面でそのようなことに気を付けて過ごしているのか」について、診断書にできるだけ詳しく記載していただくことがポイントとなるでしょう。
4.今回のケースでのポイントは?
今回は、初診日において厚生年金被保険者でしたので、障害等級3級に該当すれば、障害年金の受給可能性があります。人工弁に置換されていることから、3級認定はほぼ間違いありませんので、年金受給は可能であろうとの判断でした。
初診日証明(受診状況等証明書)は、弊所で代理取得いたしましたが、証明書記載内容のうち、健康診断を受けられた年月日について、記載ミスにより事実と異なる日付が書かれていることがわかりました。担当社労士が速やかに作成医療機関に依頼し、訂正の手続きをとりました。
次に、現在の症状を表す診断書の作成依頼をします。
心疾患は検査成績や具体的な日常生活等を把握して総合的に認定するとされていることから、発症から初診、診断後の経過、検査所見、その後の日常生活の様子などをじっくりとお伺いし、診断書にはできるだけ日常生活での支障具合を記載して頂けることを目指しました。
検査所見のデータとして心電図の検査結果を取り寄せた上、自覚所見、他覚所見をしっかりと診断書に反映していただけるよう、お願い致しました。
診断書を入手したところ、「一般状態区分イ」という内容でした。一般状態区分がイの場合は、2級に認定されることないでしょう。ただし、異常所見の有無はしっかりチェックする必要がります。
弁疾患における、2級該当の要件である、下記をチェックします。
- 人工弁を装着術後、6ヶ月以上経過しているが、なお病状をあらわす臨床 所見が 5つ以上、かつ、異常検査所見が 1つ以上あり、かつ、一般状態区分 表のウ又はエに該当するもの
- 異常検査所見のA、B、C、D、E、Gのうち 2つ上の所見、かつ、病状をあらわす臨床所見が 5つ以上あり、かつ、一般状態区分表のウ又はエに 該当するもの
最後に、心疾患による障害認定基準を記載します。
心疾患で障害年金の請求をしようか迷いのある方、ご不安のある方はご参考になさってください。

心疾患による障害年金について
心疾患による障害は、以下の6つに大別されます。
それぞれの区分に異なる認定基準が定められています。
- ① 弁疾患
- ② 心筋疾患
- ③ 虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)
- ④ 難治性不整脈
- ⑤ 大動脈疾患
- ⑥ 先天性心疾患
今回のケースは、①弁疾患にあたり、その認定基準は以下の通りです。
1 級
病状(障害)が重篤で安静時においても、心不全の症状(NYHA 心機能分類 クラスⅣ)を有し、かつ、一般状態区分表のオに該当するもの
2 級
1 人工弁を装着したもの
2 異常検査所見のA、B、C、D、E、Gのうち 2つ以上の所見、かつ、病 状をあらわす臨床所見が 5つ以上あり、かつ、一般状態区分表のウ又はエに 該当するもの
3 級
1 人工弁を装着したもの
2 異常検査所見のA、B、C、D、E、Gのうち 1つ以上の所見、かつ、病 状をあらわす臨床所見が 2つ以上あり、かつ、一般状態区分表のイ又はウに 該当するもの
(注 1) 複数の人工弁置換術を受けている者にあっても、原則 3 級相当とする。
(注 2) 抗凝固薬使用による出血傾向については、重度のものを除き認定の対象とはしない。
※一般状態区分表とはどのようなものですか?
一般状態区分表
区分 | 一般状態 |
---|---|
ア | 無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、 発病前と同等にふるまえるもの |
イ | 軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、 歩行、軽労働や座業はできるもの 例えば、軽い家事、事務など |
ウ | 歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、 軽労働はできないが、日中の 50%以上は起居しているもの |
エ | 身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、 日中の 50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能と なったもの |
オ | 身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、 活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの |
結果
障害厚生年金3級(年間約140万円)認定
振り返って
障害年金制度では、弁置換術を施行したことのみで障害等級3級を受給できるものですが、術後経過、異常検査所見、日常生活の状況、自覚、他覚所見の有無とその程度により上位等級(1級、2級)に認定されるケースもあります。
今回のケースでは3級に認定されましたが、弁置換=(イコール)3級とくくってしまうことで、異常所見、以上検査数値がどうであるかについての検証をおろそかにしてはいけません。
また、できあがってきた医証(受診状況等証明書、診断書)の記載内容に抜け落ちや、記載誤りがないかどうか、確認することも大変重要です。
当事務所では2の女性社会保険労務士が、相談者様のお気持ちに寄り添い、丁寧に聞き取りすることを心掛けております。専門家に依頼することで新たな道筋が発見される場合も少なくありません。是非一度ご相談にいらしてください。