相当因果関係って何?

少し専門的な話になりますが、障害認定基準の中に「相当因果関係」という用語が出てきます。「相当因果関係」は初診日の特定において大変重要な概念となります。

例えば、糖尿病性網膜症の場合、眼科を初めて受診した日ではなく、糖尿病で病院を初めて受診した日が初診日となります。糖尿病性網膜症と糖尿病が「相当因果関係あり」とされるためです。

今回は「相当因果関係」について紹介したいと思います。

関係条文

先ず、関係条文を見てみたいと思います。

国民年金法第30条

障害基礎年金は、疾病にかかり、又は負傷し、かつ、その疾病又は負傷及びこれらに起因する疾病(以下「傷病」という。)について初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日(以下「初診日」という。)において・・・ (以下省略)

厚生年金保険法第47条:

障害厚生年金は、疾病にかかり、又は負傷し、その疾病又は負傷及びこれらに起因する疾病(以下「傷病」という。)につき初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日(以下「初診日」という。)において・・・(以下省略)

六法全書

障害認定基準

上記条文の「起因する疾病」を障害認定基準では下記の様に説明しています。

「前の疾病又は負傷がなかったならば後の疾病が起こらなかったであろうというように、前の疾病又は負傷との間に相当因果関係があると認められる場合をいい、負傷は含まれないものである。」

つまり、前発の病気やケガが後発の病気の原因であるかどうかで、「相当因果関係あり」または「相当因果関係なし」と判断されることになります。

相当因果関係と初診日

「相当因果関係あり」か「相当因果関係なし」かで下記のように初診日が変わります。

相当因果関係あり
→ 前発の病気やケガの初診日

相当因果関係なし
→ 後発の病気の初診日

相当因果関係の判断

「相当因果関係あり」「相当因果関係なし」の判断は簡単ではありません。基本的には疾病の特性を医学的な見地から判断することになりますが、一方で医学的見解とは異なり障害年金上の独特の概念で判断されることもあります。つまり、主治医の先生が因果関係ありと判断されても、障害年金の審査では「相当因果関係なし」とされることもあるということです。

具体例

相当因果関係ありとされることが多いもの

前発の病気やケガ(→初診日) 後発の病気
糖尿病 糖尿病性網膜症
糖尿病性腎症
糖尿病性神経障害
糖尿病性動脈閉塞症
糸球体腎炎(ネフローゼ含む) 慢性腎不全
多発性のう胞腎
慢性腎炎
肝炎 肝硬変
結核 聴力障害(化学療法による副作用)
手術(輸血) 輸血による肝炎
ステロイド投薬 大腿骨頭無腐性壊死(ステロイドの投薬による副作用)
事故 精神障害
脳血管疾患
肺疾患 呼吸不全(肺疾患手術後)
転移性悪性新生物 転移性悪性新生物(原発とされるものと組織上一致するか、転移であることを確認したもの)

相当因果関係なしとされることが多いもの

前発の病気やケガ 後発の病気(→初診日)
高血圧 脳出血
脳梗塞
糖尿病 脳出血
脳梗塞
近視 黄斑部変性
網膜剥離
視神経萎縮

ご自身で対応されることが難しい場合は専門家に相談されることをお勧めします。