交通事故で後遺障害が残った皆様へ

交通事故の後遺障害で障害年金の受給が可能

平成29年中に発生した交通事故の件数は全国で47万2,165件、この事故により1か月以上の治療を必要とする負傷を負った者の数は36,895人となっています。(警視庁ウェブサイトより)

交通事故で障害が残った場には、相手側が加入している自賠責保険や任意保険や障害が残った方が加入している自動車の任意保険から賠償金を受けるのが基本です。

しかし、交通事故による負傷が原因で障害が残った場合に、自動車保険からの損害賠償金を受け取った場合には、障害年金を受け取れないとする法律上の規定はありません。

従って、交通事故による負傷が原因の障害でも、障害年金の基準を満たす場合には、障害年金を受給することができます。

交通事故で大きな障害が残った場合、自賠責保険や自動車任意保険からの賠償金だけでは、その後の被害者の方の一生分の生活費を十分に補償できないのが現実です。

そんな時、定期的に一定の給付を受けられる障害年金が受給できるとすると、被害者の方にとっては非常に心強い話です。

自賠責保険の後遺障害基準と障害年金の基準の比較について

例えば、交通事故によって両眼が失明したとします。

この場合、自動車損害賠償保障法の後遺障害等級では1級に該当し、最高で3,000万円の賠償金を受け取ることができます。

一方、障害年金の基準では、両眼視力喪失は眼の障害では「両眼の視力の和が0.04以下のもの」に該当するため、1級の障害年金が受給できます。

交通事故で両眼を失明した方が事故当時国民年金の被保険者であり、納付要件をクリアしているとすると、1級の障害基礎年金の金額は年額974,125円・月額約81,177円(平成30年度価格)です。

仮にこの方の眼の障害が回復しないものであるとした場合、この方は一生涯1級の障害基礎年金を受給できるので、生活費の問題は大きく改善します。

また、例えば、交通事故による負傷の後遺症で言語機能を廃した場合を想定します。

この場合、自動車損害賠償保障法の後遺障害等級では1級に該当し、最高で3,000万円の賠償金を受け取ることができます。

一方、障害年金の基準では、言語機能を廃した場合は2級に該当します。

事故の被害者の方が事故当時国民年金の被保険者で納付要件をクリアしていたと仮定すると、2級の障害基礎年金(年額779,300円、月額64,941円・平成30年度価格)が受給できます。

この方も自賠責保険からの賠償金と障害年金の双方が受給できるので、事故後の経済状況は大きく改善します。

交通事故による障害で障害年金を受けるための注意点

障害年金を受給するためには、まず、初診日(交通事故の場合にはほとんど事故発生日)から一定期間経過後の障害認定日において、一定水準以上の障害の状態にあることが必要です。

その他、原則として、初診日の前日に初診日の前々月までの被保険者期間について、保険料の未納期間が3分の1以上とならないことが必要です。

なお、平成38年3月31日までに初診日があり、初診日において65歳未満の場合には、初診日の前々月から遡って1年間に保険料未納期間がなければ納付要件がクリアされるという特例が適用されます。

従って、国民年金保険料が支払えないから未納のままにしておくと、交通事故に巻き込まれて重い障害が残った場合でも、保険料の納付要件をクリアできないために障害年金が受給できない場合があります。

どうしても保険料が支払えない場合でも免除の手続きをしておけば、万が一の事故で大きな障害が残った場合でも、納付要件を満たさないから障害年金が受給できないという事態は起こりません。