心臓に疾患がある皆様へ
心臓疾患による障害でも障害年金が受けられる
厚生労働省が公表している平成29年の人口動態統計月報年計によると、平成29年中に心疾患が原因で死亡した方は、全死亡者の約15.2%で、第1位の悪性新生物(約27.8%)に次いで死因の第2位となっています。
心疾患は、悪性新生物(がん)、脳梗塞などの脳血管疾患と共に3大国民病と言われて、非常に多くの方がり患しますが、心疾患による障害でも、一定の要件を満たした場合には障害年金が請求できます。
心疾患による障害の障害認定基準で分かりやすいのがペースメーカーや人工弁・ICD(植込み型除細動器)装着に関するものです。
心疾患が原因でペースメーカー、人工弁、ICDを装着した場合には、装着日が障害認定日で装着すれば障害等級の3級以上が確定します。
従って、初診日の初診日が厚生年金の被保険者期間中にあり、納付要件を満たしていれば申請することによって、障害年金(最低限で障害厚生年金3級)を受け取ることができます。
心疾患による障害年金の認定基準について
心疾患による障害の認定基準は以下のとおりです。
第1級 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同等以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
第2級 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同等以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
第3級 身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの
大まかに言うと、心疾患による障害が原因で、日常生活のほとんどが自分で全くできない状態が1級、同じく日常生活が大幅に制限される状態が2級、日常生活はなんとかできるが、労働に制限を受けるか又は制限を加える必要がある状態が3級ということになります。
心疾患による障害の場合には、他の一部の障害の認定基準と比較して客観的な基準が定められています。
心疾患の障害認定は、以下で表示する異常検査所見、一般状態区分、臨床所見などを総合的に判断して行われます。
異常検査所見
A. 安静時の心電図において0.2mV以上のSTの低下もしくは0.5mV以上の深い陰性T波(aVR誘導を除く)の所見があるもの
B. 負荷心電図(6Mets未満相当)等でにおいて明らかな心筋虚血所見があるもの
C. 胸部X線上で心胸郭係数60%以上又は明らかな肺静脈性うっ血所見や間質性肺水腫のあるもの
D. 心エコー図で中等以上の左室肥大と心拡大、弁膜症、収縮能の低下、拡張機能の制限、先天性異常のあるもの
E. 心電図で、重症な頻脈性又は徐脈性不整脈所見のあるもの
F. 左室駆出率(EF)40%以下のもの
G. BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)が200pg/ml相当を超えるもの
H. 重症冠動脈狭窄病変で左主幹部に50%以上の狭窄、あるいは、3本の主要冠動脈に75%以上の狭窄を認めるもの
I. 心電図で陳旧性心筋梗塞所見があり、かつ、今日まで狭心症状を有するもの
一般状態区分
ア. 無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの
イ. 軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるか、歩行、軽労働や座業はできるもの
ウ. 歩行や身の回りのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの
エ. 身の回りのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日常の50%以上は就床しており、自力では屋外へでの外出等がほぼ不可能となったもの
オ. 身の回りのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベットの周辺に限られるもの
臨床所見
臨床症状とは、医療において患者が実際に病床で呈している症状のことを言います。それを医師が確認したものが臨床所見になります。具体的には、全身倦怠感、悪心、動機、息切れ、めまい、胸部疼痛などが該当します。
心疾患による障害の認定基準は、さらに以下の6つのグループに区分され、その各グループごとにより詳細な基準が設けられています。
- 弁疾患による障害
- 心筋疾患による障害
- 虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)による障害
- 難治性不整脈による障害
- 大動脈疾患による障害
- 先天性心疾患による障害
例えば、弁疾患による障害の基準では
(a) 異常検査所見A、B、C、D、E、Gのうち2つ以上の所見がある
(b) 病状をあらわす臨床所見が5つ以上
(c) 一般状態区分のウ又はエに該当
以上(a)から(c)のすべてに該当した場合に2級となります。
申請のしやすい心疾患による障害年金について
障害年金の申請は非常に難しいことが多いのですが、その理由は、障害認定の基準が複雑で分かりにくいため、障害の状態に該当した時にその障害で障害年金が受給できるかできないかの見極めが難しいことがあげられます。
ただし、一定の障害については、専門の医師でなくても障害年金が受給できる障害であるかどうかの見極めが簡単にできます。
そういった障害は様々な障害に関していくつかありますが、心疾患に関するものの中にも存在します。
それは、心疾患が原因で人工弁、ICD(植込み型除細動器)、ペースメーカーを装着した場合です。
人工弁、ICD、心臓ペースメーカー等を装着した場合には、その装着日から障害等級の3級(一定の要件を満たす場合には2級以上)に該当します。
初診日が厚生年金の被保険者期間にあって納付要件を満たしている場合には、障害厚生年金は3級がありますから、必ず障害年金を受け取ることができます。
心疾患が原因で人工弁、ICD、心臓ペースメーカー等を装着したということは、専門の医師でなくても誰の眼にもはっきり分かることです。
障害認定日についても、原則は初診日から1年6ヵ月経過後ですが、人工弁、ICD、心臓ペースメーカー等については装着日(初診日から1年6カ月を超える場合を除く)が認定日になるのでこれも誰の眼にも明らかです。
初診日からすぐ装着手術をした場合には、装着日が認定日ですから初診日から1年6カ月を待たずしてすぐに障害年金を申請できる点もメリットです。障害を持たれる方の早期の救済が可能になります。
初診日が国民年金の被保険者期間又は60歳から65歳までの老齢基礎年金受給待機期間(厚生年金の被保険者期間は除く)にあれば、障害等級が2級以上でないと受給できない障害基礎年金しか受けることができません。
このため、人工弁、ICD、心臓ペースメーカー等を装着しただけであれば3級にしか該当しないため、このケースでは障害基礎年金を受け取ることができません。
人工弁、ICD、心臓ペースメーカー等を装着しただけで障害年金を受取るためには、初診日が厚生年金被保険者期間中にある必要があるので、注意が必要です。