人工肛門造設により障害厚生年金3級が決定した事例
ご相談者
- 男性(50代)
- 傷病名:潰瘍性大腸炎
- 年金種類と等級:障害厚生年金3級
相談時の状況
- 「潰瘍性大腸炎」と診断され、人工肛門を造設した。
- 手術後、身体障害者手帳を取得したが、障害年金について知識がなく、請求していない。
- 「手術からかなり時間が経ってしまっているが、障害年金を請求できますか」とのご相談をお受けしました。
診断の経緯
- 30代の頃、消化器内科で潰瘍性大腸炎と診断され、通院治療。
- 専門医へ転院して治療を続けたが症状が悪化したため、人工肛門造設術を施行した。
- 術後、数年間は経過観察のため受診していたが、変化がないと感じたため受診を中断した。
- 最近、血便が生じたため潰瘍第大腸炎の再発・悪化を疑っている。
請求のポイント
1 初診日の特定
- 人工肛門造設は3級に認定されます。
- 3級は、初診日が厚生年金加入期間中にある方が受給できる年金です。
- 請求者様のケースでは、消化器内科を受診した日が請求傷病「潰瘍性大腸炎」の初診日と考えます。この頃は厚生年金加入中でした。
- 障害年金請求における初診日は通常、初診時の医療機関が作成した「受診状況等証明書」を提出し、年金機構の確認を受けます。提出できない場合には、別途の初診証明書類により確認を受けます。 初診病院の終診日からの期間が長かったので、病院にカルテが保存されていませんでした。初診日病院で作成不能な場合の別途の初診証明書類について、 厚生労働省の通達「障害年金の初診日を明らかにすることができる書類を添えることができない場合の取扱いについて」を基に検討しました。
→Ⓐ初診病院に残っていたデータ(受診日)
Ⓑ請求の5年以上前に医療機関が作成した資料(診療録等)に記載された請求者の申し立て
それぞれの医療機関で受診状況等証明書を作成頂き、提出しました。
→請求者が申し立てた日が初診日と認められました。
2 診断書
お問い合わせいただいた時は、請求傷病について何年も受診していないとのことでした。障害年金請求では、障害の程度の認定を 「診断書及びX線フィルム等添付資料により行う」と定められています。障害年金請求手続きにあたっては現在の症状についての診察を受け、 診断書作成を依頼する必要があるとお伝えしました。
人工肛門造設術を受けた病院を受診。受診時の病状について診断書が作成されました。
3 障害認定日
障害の程度の認定を行うべき日を「障害認定日」といいます。初診日から1年6カ月を過ぎた日、 または1年6カ月以内にその病気やけがが治った場合(症状が固定した場合)はその日を指します。
一方で傷病の種類や状態によって、初診日から1年6ヶ月以内でも一定の状態に該当した日が、特例として「障害認定日」となります。
請求者様の請求傷病については「人工肛門の造設、尿路変更術を施術した場合は、造設または手術を施した日から起算して6カ月を経過した日」とされています。 この日が初診日から1年6か月経過日よりも前にある場合、特例として該当日が障害認定日となります。
事後重症請求
請求者様から「遡及請求できないか」とのお尋ねがありました。遡及請求とは、障害認定日の障害状態について、過去に遡って障害年金請求を行う方法です。
請求者様のケースでは、初診日から1年6ヶ月経過した日が障害認定日※でしたが、当時の障害状態については診断書が取得できませんでした。前述の診断書にて記述した通り、障害状態に該当していることを確認することができないため、遡及請求(障害認定日請求)を行わず、事後重症請求(現在の症状についての障害年金請求)を行いました。
※取得した診断書の記載内容から、障害認定日の特例に該当しないことを確認しました
結果
障害厚生年金3級 認定
年間 約59万円 支給
請求を終えて
- 今回は「人工肛門造設」について、障害認定を求める請求でした。
- 遡及請求は、障害認定日から1年が経過した日後に障害認定日の症状について障害認定を求める請求です。 現在の診断書で人工肛門造設日(障害認定日の特例に該当すること)が確認できれば、障害認定日頃の診断書が取得できなくても遡及請求を行うことが可能です。
- 請求者様の人工肛門造設日は、障害認定日の特例に該当しないため、障害認定日頃の診断書が取得できなければ障害の程度の認定を受けられないと判断しました。
- 事後重症請求で障害状態と認められた場合、請求した月の翌月分から年金が支給されます。年金請求が遅くなると、遅くなった月数分の年金を受け取ることができません。 少しでも早く年金請求出が出来るよう、提出書類を揃えることが重要です。
- 専門的な判断、迅速な手続きが求められるケースについては、障害年金を専門とする社会保険労務士にご相談ください。