障害補償年金(労災給付)受給中の障害年金請求について
ご相談者
男性(60歳)
障害の種類
- 多発外傷
- 工事脳機能障害
ご相談時の状況
- 就業中の事故(転落)による後遺障害で障害補償年金を受給中。
- 身体障害者手帳3級
- 精神保健福祉手帳1級
ご相談の内容
- 障害補償年金と同一傷病で障害年金を請求できるか。
- 老齢年金に加えて障害年金が受給できるか。
- 手続き方法を知りたい。
サポート内容
① 障害補償年金(労災)と障害年金の併給調整について
労災保険と同じ傷病で障害年金を受給する場合、障害年金は全額、労災保険給付は一定の調整率を乗じて得た額が支給されます。
請求者様のケースについて、下記をご説明しました。
労災給付(年金)と障害基礎年金 → 調整率:0.88(労災給付が12%減額される)
労災年金額×0.88 + 障害基礎年金額
参考:併せてお読みください。
弊所HP障害年金ブログ「障害年金と労災は両方もらえますか?」
② 65歳以降の障害年金請求について
障害の原因となった傷病名として「軽度精神遅滞」「双極性感情障害」と併記されていることを確認しました。
障害年金請求は、老齢年金の受給権が発生する日(65歳に達する日)の前日(誕生日の2日前)までに行うのが一般的です。
以下に該当する場合、65歳以降に請求できる可能性があります。
- 初診日が65歳前にあり、障害認定日に障害の状態にある。
- 厚生年金保険の加入者
請求者様はア)に該当しました。
③ 老齢年金との併給について
請求者様は弊所での相談時に65歳を超えており、老齢年金を受給中とのことでした。
支給事由(老齢・障害・遺族)が異なる2つ以上年金受給権が発生した場合、いずれかの年金を選択することが原則ですが、65歳以降には特例的に2つの年金が受給できることがあります。
今回のケース(65歳以降、老齢年金と障害年金の受給権が発生)は次のいずれかの組み合わせを選択することができます。
- 障害基礎年金と障害厚生年金
- 老齢基礎年金と老齢厚生年金
- 障害基礎年金と老齢厚生年金
どの組み合わせで受給するかは、「年金額が多い」「税金の有無(老齢年金は課税、障害年金は非課税)」などを考慮して選択することになります。年金額は、年金事務所で試算してもらうことができます。
請求者様は「障害基礎年金と老齢厚生年金」の併給を希望されました。年金請求時に「年金受給選択申出書」を提出し、希望する年金を請求します。
④ 診断書
多発外傷「肢体の障害」、高次脳機能障害「精神の障害」
それぞれの診断書を提出しました。
結果
障害基礎年金1級(年間約97万円)認定
相談を終えて
- 今回のケースでは、発生時期の異なる3つの受給権について、併給調整を検討する必要がありました。
- → 労災給付との併給調整は、労災給付が減額支給されて障害年金は満額支給。
- → 齢年金との併給調整は、組み合わせを選択する。
- 精神遅滞の初診日は、受診の有無にかかわらず「出生日」と取り扱われます。
- 併給調整はいくつかの制度間、複数のパターンがありますので、注意が必要です。
- 専門的な知識や判断が必要な場合は、社会保険労務士への相談もご検討ください。