人工弁やICD装着で障害厚生年金3級を受給できた事例

請求者

  • 男性(30代)
  • 傷病名:弁閉鎖不全症、心室細動
  • 年金種類と等級:障害厚生年金3級

ご相談時の状況

請求者ご本人にご来所いただき、発病からの経緯を詳細にお伺いしました。

  • 10年ほど前に会社の健康診断で心電図要検査の指摘があり、総合病院を受診。(厚生年金加入中)僧帽弁閉鎖不全症と診断され、すぐに弁置換術を受けた。
  • 術後は定期に外来受診し血圧コントロールや、人工弁に対する抗凝固療法を継続した。
  • 1年ほど前、急に倒れ救急搬送された(厚生年金加入中)。心室細動と診断され、同月S-ICD埋込術を受けた。
  • 人工弁やICDを入れると障害年金がもらえるとネットで見たが、自分にも受給できる見込みがあるのか、とのご相談でした。
  • 身体障害者手帳 1級所持

相談から請求までのサポート

心疾患による障害は、以下の6つに大別されます。

それぞれの区分に異なる認定基準が定められています。

  1. 弁疾患
  2. 心筋疾患
  3. 虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)
  4. 難治性不整脈
  5. 大動脈疾患
  6. 先天性心疾患

今回のケースは、①弁疾患および④難治性不整脈にあたり、その認定基準は以下の通りです。

①弁疾患

1級

病状(障害)が重篤で安静時においても、心不全の症状(NYHA 心機能分類クラスⅣ)を有し、かつ、一般状態区分表のオに該当するもの

2級

  1. 人工弁を装着術後、6ヶ月以上経過しているが、なお病状をあらわす臨床所見が5つ以上、かつ、異常検査所見が1つ以上あり、かつ、一般状態区分表のウ又はエに該当するもの
  2. 異常検査所見のA、B、C、D、E、Gのうち 2つ以上の所見、かつ、病状をあらわす臨床所見が 5つ以上あり、かつ、一般状態区分表のウ又はエに該当するもの

3級

  1. 人工弁を装着したもの
  2. 異常検査所見のA、B、C、D、E、Gのうち 1つ以上の所見、かつ、病状をあらわす臨床所見が2つ以上あり、かつ、一般状態区分表のイ又はウに該当するもの

④ 難治性不整脈

1級

病状(障害)が重篤で安静時においても、心不全の症状(NYHA 心機能分類クラスⅣ)を有し、かつ、一般状態区分表のオに該当するもの

2級

  1. 異常検査所見のEがあり、かつ、一般状態区分表のウ又はエに該当するもの
  2. 異常検査所見のA、B、C、D、F、Gのうち2つ以上の所見及び病状をあらわす臨床所見が 5つ以上あり、かつ、一般状態区分表のウ又はエに該当するもの

3級

  1. ペースメーカー、ICDを装着したもの
  2. 異常検査所見のA、B、C、D、F、Gのうち 1つ以上の所見及び病状をあらわす臨床所見が 1つ以上あり、かつ、一般状態区分表のイ又はウに該当するもの
(注 1) 難治性不整脈とは、放置すると心不全や突然死を引き起こす危険性の高い不整脈で、適切な治療を受けているにも拘わらず、それが改善しないものを言う。
(注 2) 心房細動は、一般に加齢とともに漸増する不整脈であり、それのみでは認定の対象とはならないが、心不全を合併したり、ペースメーカーの装着を要する場合には認定の対象となる。

相談者様は、先発の僧帽弁閉鎖不全症による障害として、①弁疾患 3級の「1.人工弁を装着したもの」にあたり、3級の認定基準を満たしています。さらに上位等級の2級に該当するかどうかは、診断書に記載される所見の内容によりますので、診断書の記載内容を精査する必要があります。
一方、後発の心室細動による障害としては、④難治性不整脈 3級の「ICDを装着したもの」に該当すると考えられます。

両疾患とも、厚生年金に加入中の初診日でしたので、審査の結果3級に認定されれば、少なくとも障害年金の受給可能性があります。

検査所見のデータとしては、心電図の検査結果を取り寄せた上、自覚所見、他覚所見をしっかりと診断書に反映していただけるよう、請求者様にお願い致しました。

結果

障害厚生年金3級(年間約60万円)に決定

振り返って

心疾患においては、人工弁やICD、S-ICD挿入したことのみで障害年金3級を受給できる可能性が高いといえます。

今しかし、それらが時を異にし、複数回施術されたものである場合は細心の注意を要します

同一傷病として請求するか、別傷病として請求するかにより、請求者様が得られるであろう障害年金受給権に大きな影響を及ぼすこととなるためです。

また、術後経過、異常検査所見、日常生活の状況、自覚、他覚所見の有無とその程度により上位等級(1級、2級)に認定されるケースもあります

今回のケースでは、まず、別傷病として裁定請求しましたが、審査の結果、別傷病とは認定されず、同一傷病としての請求に変更するよう返戻がありました。また、その他の所見等を総合的に審査されたところ、結果的に2級には認定されませんでした。

専門家としては、複数回の施術でも、心臓という1つの臓器の中での疾患であれば、直ちに単数障害と考えて請求を組み立てるのではなく、請求者の事情をよくヒアリングし、最善の請求方法を考えるべきでしょう。
また、最初から3級でよいという姿勢ではなく、さらに上位等級に認定される可能性を常に意識し、どんな小さな所見も見落とすことなく拾い上げ、審査に臨む姿勢が求められるのではないでしょうか。

当事務所では2名の女性社会保険労務士が、相談者様のお気持ちに寄り添い、丁寧に聞き取りすることを心掛けております。確かな経験を有した専門家に依頼することで、新たな道筋が発見される場合も少なくありません。是非一度ご相談にいらしてください。