ペースメーカー装着で障害基礎年金2級を受給できた事例

請求者

  • 男性(40代)
  • 傷病名:拡張型心筋症
  • 年金種類と等級:障害厚生年金2級

ご相談時の状況

請求者ご本人にご来所いただき、発病からの経緯を詳細にお伺いしました。

  • 15年ほど前に腰のヘルニアの手術目的で整形外科を受診した際に、術前の心電図検査を行ったところ、心電図に異常所見が見付かった。初診日時点は就労していたが、国民年金第1号被保険者だった。
  • 精査の結果、突発性拡張型心筋症と診断されたが、経過観察でよいとの診断を受けた。
  • 約5年後咳や血痰がひどく出るようになり、異常な倦怠感を自覚したため、受診したところ、うっ血性心不全と診断され、即入院した。
  • さらに5年たったころ、ペースメーカー移植術を施行。
  • ペースメーカーを入れると障害年金がもらえるとネットで見たが、約7年間何も障害年金の手続きをしていなかった。自分にも受給できる見込みがあるのか。
  • 身体障害者手帳 1級所持

相談から請求までのサポート

ペースメーカーを装着した場合の障害年金請求のポイントは3つ!

1. ペースメーカーを装着したら、何級に認定されるのですか?

ペースメーカーを装着している場合は、原則障害等級3級に認定されます。

一口にペースメーカーといっても、その種類により、2級に認定されるものもあり、注意が必要です。

2級となるもの
  • CRT(心臓再同期医療機器)
  • CRT-D(除細動器機能付き心臓再同期医療機器)
3級となるもの
  • ペースメーカー
  • ICD(植込み型除細動器)

また、ペースメーカーの種類がICDだから、3級しか認定されないということではなく、異常所見、検査結果の数値等、上位等級(2級)になる可能性もありますので、認定基準に照らし、注意深く検討する必要があります。

2. ペースメーカーを装着したら、いつ障害年金の請求ができるのですか?

障害年金は、原則、初診日から1年6か月後の「障害認定日」の症状に応じて障害等級が認定されますが、ペースメーカーを装着した場合には

  • ペースメーカー装着日
  • 初診日から1年6か月した日

のいずれか早い日を障害認定日として、障害年金を請求することが可能です。

ペースメーカーを装着したら、1日も早く障害年金の請求手続きをされることが肝要です。

3. 働いているとペースメーカー移植で障害年金を受給できないのですか?

障害年金の障害等級認定にあたっては、日常生活や労働にどのような支障があるのか、ということが重視されます。

ペースメーカー移植術を受けられた方は、術後の療養を経て職場復帰される方も多く、弊所における受給事例においても、皆さんお仕事に復帰されている方の請求事例がほとんどです。

そのため、
「いかに労働や日常生活に支障があるのか」
「周囲からどのような配慮を受けて就労しているのか」
「日常生活や労働の場面でそのようなことに気を付けて過ごしているのか」
について、診断書にできるだけ詳しく記載していただくことがポイントとなるでしょう。

また、障害年金を初めて請求された結果、障害等級に該当した場合でも、更新の際に等級不該当とならないよう留意が必要です。

更新の際提出する診断書における「一般状態区分」が、ア~オのいずれに〇がついているのか、注意することも必要であると考えます。

4. 今回のケースでのポイントは?

今回は、初診日において国民年金第1号被保険者でしたので、障害等級2級に該当しなければ、受給できません。

現在の症状を表す診断書の作成依頼をし、入手したところ、「一般状態区分ウ」という内容でした。また、障害等級2級の要件である、「異常検査所見のA、B、C、D、E、Gのうち2つ以上の所見、かつ、病状をあらわす臨床所見が5つ以上」にも該当していました。

また、ご相談にお見えになった際に、ご本人から確認できなかったことですが、ペースメーカーの中でも、CRT-D移植であったことが後にわかり、結果、無事、障害等級2級に認定されました。

心疾患は検査成績や具体的な日常生活等を把握して総合的に認定するとされていることから、発症から初診、診断後の経過、検査所見、その後の日常生活の様子などをじっくりとお伺いし、診断書にはできるだけ細やかに日常生活での支障具合を記載して頂けることを目指しました。

検査所見のデータとして心電図の検査結果を取り寄せた上、自覚所見、他覚所見をしっかりと診断書に反映していただけるよう、医師の診察の際細やかに診察していただけるようお願い致しました。

最後に、心疾患による障害認定基準を記載します。
心疾患で障害年金の請求をしようか迷いのある方、ご不安のある方はご参考になさってください。

心疾患による障害年金について

心疾患による障害は、以下の6つに大別されます。

それぞれの区分に異なる認定基準が定められています。

① 弁疾患
② 心筋疾患
③ 虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)
④ 難治性不整脈
⑤ 大動脈疾患
⑥ 先天性心疾患

今回のケースは、②心筋疾患にあたり、その認定基準は以下の通りです。

心筋疾患

1級

病状(障害)が重篤で安静時においても、心不全の症状(NYHA 心機能分類クラスⅣ)を有し、かつ、一般状態区分表(※)のオに該当するもの

2級
  1. 人工弁を装着術後、6ヶ月以上経過しているが、なお病状をあわらす臨床所見が5つ以上、かつ、異常検査所見が1つ以上あり、かつ、一般状態区分表のウ又はエに該当するもの
  2. 異常検査所見のA、B、C、D、E、Gのうち2つ以上の所見、かつ、病状をあらわす臨床所見が5つ以上あり、かつ、一般状態区分表(※)のウ又はエに該当するもの
3級
  1. EF値が 50%以下を示し、病状をあらわす臨床所見が2つ以上あり、かつ、一般状態区分表のイ又はウに該当するもの
  2. 異常検査所見のA、B、C、D、E、Gのうち 1つ以上の所見、かつ、病状をあらわす臨床所見が2つ以上あり、かつ、一般状態区分表(※)のイ又はウに該当するもの

(注)肥大型心筋症は、心室の収縮は良好に保たれるが、心筋肥大による心室拡張機能障害や左室流出路狭窄に伴う左室流出路圧較差などが病態の基本となっている。したがってEF値が障害認定にあたり、参考とならないことが多く、臨床所見や心電図所見、胸部X線検査、心臓エコー検査所見なども参考として総合的に障害等級を判断する。

※ 一般状態区分表とはどのようなものですか?
区分 一般状態
無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの
軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの 例えば、軽い家事、事務など
歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の 50%以上は起居しているもの
身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の 50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの
身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

結果

  • 障害厚生年金2級(年間約78万円)
  • 加給年金(お子様2人分約45万円)
  • 合計年額123万円

振り返って

障害年金制度では、ペースメーカー移植をしたことのみで障害等級3級を受給できるものですが、術後経過、異常検査所見、日常生活の状況、自覚、他覚所見の有無とその程度により上位等級(1級、2級)に認定されるケースもあります。

今回のケースでは2級には認定されましたが、ペースメーカー=(イコール)3級とくくってしまい、初診日が国民年金の方は受給できない、と考えてしまう傾向があるように感じます。

専門家としては最初から3級でよいという姿勢ではなく、さらに上位等級に認定される可能性を常に意識し、審査に臨む姿勢が求められます。

当事務所では2の女性社会保険労務士が、相談者様のお気持ちに寄り添い、丁寧に聞き取りすることを心掛けております。専門家に依頼することで新たな道筋が発見される場合も少なくありません。是非一度ご相談にいらしてください。