再発による受診日を初診日として膵性糖尿病により障害厚生年金3級を受給できた事例

●請求者

  • 男性(50代)
  • 傷病名:膵性糖尿病
  • 年金種類と等級:障害厚生年金3級

●相談時の状況

請求者様にご来所いただきました。

「10年以上前に膵臓を部分切除している。その後、残膵にがんが再発し全摘出したことで膵性糖尿病となり、治療を受けている。障害年金を請求できるのか、その場合の手続き方法を知りたい。」とのご相談をお受けしました。現在、インスリン治療を続けながら就労中。

●サポート内容

①初診日の確認

障害年金請求では、初診日を特定することが重要です。障害年金求に必要な要件のうち、加入要件と保険料納付要件は初診日を基準に確認します。また、障害の程度の認定を行うべき日(障害認定日)は原則、初診日から1年6月を経過した日と定められているからです。

請求者様は現在診断を受けている傷病、膵性糖尿病で障害年金を請求します。障害年金独特の考え方「相当因果関係」により、膵臓疾患ではじめて受診した日が糖尿病の初診日となります。

※相当因果関係:「前の疾病又は負傷がなかったならば後の疾病が起こらなかったであろう」という考え方( 障害認定基準 第1一般的事項に記載 )


相談時に、上記をご説明したうえで病歴を詳しくお伺いいたしました。

請求者様は膵臓の手術を2回、相当の期間を開けて受けておられました。初回の手術では患部を切除し、術後の経過良好。就労を継続されておられましたが、9年後に突如腹部に違和感を覚えて受診。残った膵臓に腫瘍が見つかり、膵臓全摘出の手術を受けられました。

糖尿病の治療を開始されたのは2回目の手術で膵臓を全摘出した後、とのことです。手術前に医師から「膵臓を全摘出すると重度の糖尿病になる」と説明を受け、手術前に糖尿病内科を受診したことを明確に覚えておられました。

そのため請求者様は、膵臓疾患の再発により膵臓を摘出したことで糖尿病になったのだから、再発に係る初診日で請求するとのご認識でした。


しかし、請求者様のケースでは2回の膵臓疾患による治療歴があり、ご自身も「再発」と表現されております。また、2回目の膵臓疾患は悪性新生物(がん)と診断されております。障害年金認定基準の悪性新生物による障害の節には下記が示されています。

「転移性悪性新生物は、原発とされるものと組織上一致するか否か、転移であることを確認できたものは、相当因果関係があるものと認められる。」

上記により、2回に分けて治療した膵臓疾患は原因が同一なのか否かを明確にする必要があるとのご説明をいたしました。

  • ㋐膵臓疾患の原因が同一:膵臓疾患の初診日
  • ㋑膵臓疾患は同じ臓器に発生した別傷病:再発による受診日

㋐㋑の受診状況等証明書に記載された事柄から、医学的な判断を確認いたしました。

その他、1回目の手術後から2回目の手術までの間に健康診断結果により、糖尿病の所見が無いことを確認しました。

上記から、㋑再発による受診日を初診日と特定し、障害認定日請求を行いました。

②請求方法

障害年金請求では請求者が初診日を特定して申請しますが、初診日は保険者(年金機構)により確認されます。請求者様のケースでは、先発と再発の膵臓疾患が同一原因と判断される可能性も想定されました。

以上を踏まえ、膵臓疾患が同一原因と判断されても「社会的治癒」の手法により、再発の膵臓疾患を請求傷病の初診日として申し立て、請求を行いました。

※社会的治癒:社会保障(障害年金、傷病手当金)制度独自の概念です。医学的な治癒とは別に、安定した社会生活をある程度長期間送ることが可能な状態を社会通念上治癒したものと認める、という考え方。

●結果

障害厚生年金3級(年間約58万円)認定

訴求3年分(約170万円)支給

●請求を終えて

  • 今回は「相当因果関係」「社会的治癒」といった、障害年金独特の考え方についての知識を要する事例でした。
  • また、今回のケースでは年金請求日から1年以上前の障害認定日に遡る遡及請求を、現症診断書のみで申請し、認定されました。例外が認められるケースでは、必要な診断書を的確に判断する必要があります。
  • 請求手続きでお困りの際は専門家にご相談ください。