慢性腎不全により障害厚生年金2級を障害認定日に遡って受給できた事例

●相談者

  • 男性(40代)
  • 傷病名:慢性腎不全
  • 年金種類と等級:障害厚生年金2級

●相談時の状況

請求者様にご来所いただき「人工透析の施行中であれば障害年金が受給可能と聞いた。手続き方法を知りたい。」とのご相談をお受けしました。数年前から人工透析を受けておられ、相談時には休職中とのことでした。

●サポート内容

初診日の確認
糖尿病の場合、治療歴が長いことや初期と現在の症状が異なることがあるため、初診日の特定が困難なケースが多くみられます。

※初診日:障害の原因となった病気やけがについて、初めて医師等の診療を受けた日のこと

まずは病歴をお伺いし、初診日の特定をいたしました。

・会社の健康診断で糖代謝異常を指摘されていたが、生活習慣病と考えており受診しなかった。
・糖尿病の認識はなかったが、中学生頃から左目が見えづらい自覚があった。右目でカバーできており、眼科を受診していなかった。平成24年頃、右目の視力が急激に低下したため眼科を受診。糖尿病性網膜症と診断された。現在、視力は手術により回復している。
・糖尿病は専門医で投薬治療を開始したが、症状が悪化し人工透析療法開始となった。
・身体障害者手帳1級

お伺いした病歴から、眼科で「糖尿病性網膜症」の診断を受けた日を初診日と特定し、手続きを進めました。

障害認定日請求
・障害認定基準に「障害の程度を認定する時期は、人工透析療法を始めて受けた日から起算して3月を経過した日(初診日から起算して1年6か月を超える場合を除く)」と記載されています。

→障害認定日の特例により、人工透析療法を受けた日から3か月を経過した日を障害認定日として、障害認定日請求(遡及請求)いたしました。

上位等級該当についての検討
障害認定基準には下記記述があります。
・人工透析療法施行中のものは2級と認定する。なお、主要症状、人工透析療法施行中の検査成績、長期透析による合併症の有無とその程度、具体的な日常生活状況等によっては、さらに上位等級に認定する。

→請求者様は糖尿病が原因の慢性腎不全と診断されています。
糖尿病の合併症(糖尿病性網膜症、糖尿病性壊疽)の有無を確認し、上位級に該当する可能性について検討いたしました。障害認定日および現在ともに、障害認定基準に該当する合併症の症状はありませんでした。

診断書について
障害認定日から1年以上経過後に遡及請求する場合には、原則、障害認定日の診断書と現症診断書(年金請求日前3か月以内の症状で作成された診断書)の提出が求められます。
例外として、現症診断書1枚の提出で請求可能なケースがあります。
請求者様は下記に該当するため、現症診断書のみを提出しました。

・現症診断書の記載事項により、障害認定日の特例に該当した日が確認できる
・障害認定日の特例に該当したことのみで、障害認定を受ける

●結果

障害厚生年金2級(年間約125万円)認定
訴求5年分(625万円)支給

●請求を終えて

・今回は障害認定日の特例により、初診日から1年6か月経過前の人工透析開始日を障害認定日とした障害認定日請求(遡及請求)を行ったケースです。
・障害認定日の特例は、障害認定基準の各節の認定要領に、障害ごとに記述があります。弊所のブログ「障害年金における障害認定日について」も併せてご一読いただければと思います。
・また、今回のケースでは年金請求日から1年以上前の障害認定日に遡る遡及請求を、現症診断書のみで申請し認定されました。申請に当たっては、必要な診断書を的確に判断する必要があります。
・請求手続きでお困りの際は専門家にご相談ください。