若年性認知症で障害厚生年金3級を受給できたケース

相談者

  • 男性(50代)
  • 傷病名:若年性認知症
  • 年金種類と等級:障害厚生年金2級
  • 支給月から更新月までの支給総額:約123万円

相談時の状況

4年前から職場で段取りの悪さを指摘されるようになり、仕事の進め方で周囲ともめることが目立つようになったそうです。そのため、他部門へ配置換えとなりましたが、時を経るごとに益々作業能率が悪くなり、すべきことを忘れてしまい、ミスが度々起こるようになりました。

職場で病院に行くように言われ、かかりつけ医を受診したところ、認知症を疑われたものの、この時ははっきりした診断名はありませんでした。さらに総合病院で検査を受けられましたが、異常なしという結果でした。

しかし、日に日に記憶力が低下し、2年前に認知症の専門医を受診、半年後に若年性認知症と診断されました。

受診時は職場の同僚2名が同席し、今後の対応についてアドバイスを受けるなど、職場の配慮を受けながら何とか現在までフルタイムで就労を継続できているとのことでした。

「就労していますが、評価が下がったため賞与は激減しました。障害年金を受給できるでしょうか。」とご相談いただきました。

相談から請求までのサポート

悩む男性

精神障害の場合、一般企業の一般枠でフルタイム勤務していると、障害年金受給のハードルが高くなるのは事実です。就労していることだけを理由として不支給とする認定が多数あり、厚生労働省に決定根拠文書の開示請求を行うと「就労しているため」とだけ書かれているケースが多々あるのです。

しかし、「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」には就労状況について以下の様に明記しています。

  • 労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、現に労働に従事している者については、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況などを十分確認したうえで日常生活能力を判断する。
  • 援助や配慮が常態化した環境下では安定した就労ができている場合でも、その援助や配慮がない場合に予想される状態を考慮する。
  • 相当程度の援助を受けて就労している場合は、それを考慮する。
  • 就労の影響により、就労以外の場面での日常生活能力が著しく低下していることが客観的に確認できる場合は、就労の場面及び就労以外の場面の両方の状況を考慮する。
  • 一般企業での就労の場合は、月収の状況だけでなく、就労の実態を総合的にみて判断する。
  • 安定した就労ができているか考慮する。1年を超えて就労を継続できていたとしても、その間における就労の頻度や就労を継続するために受けている援助や配慮の状況も踏まえ、就労の実態が不安定な場合は、それを考慮する。
  • 精神障害による出勤状況への影響(頻回の欠勤・早退・遅刻など)を考慮する。
  • 仕事場での臨機応変な対応や意思疎通に困難な状況がみられる場合は、それを考慮する。

このように、「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」においては「就労している事実だけで障害年金の決定が判断される訳ではありません。」と言っているのです。

就労しているといっても、その働き方は様々です。援助が必要な就労状況をできるだけ丁寧に示していくことが必要です。

この方の場合も、認定を得るうえで重要になるのは就労状況の証明であると考えました。

受診時に何度か職場の同僚が同席されていましたので、職場での支援の状況は医師によく伝わっており、「周囲の配慮によって何とか就労できているが、疎通性を欠き、協働作業は困難」と診断書にしっかり記載いただくことができました。

病歴就労状況等申立書には職場での手厚い配慮・保護的環境について詳細に記載しました。加えて、職場の管理職の方に職場での配慮事項について書面で証明していただき、添付資料として提出しました。

結果、障害厚生年金3級に認定されました。受給が難しいケースでしたが、無事受給となり、ご家族にも大変喜んでいただきました。

家族

結果

障害厚生年金3級(年間約93万円)認定