2大動脈解離による手術で3級を受給できた事例

ご相談者

  • 男性(40代)
  • 傷病名:急性A型大動脈解離
  • 年金種類と等級:障害厚生年金3級

相談時の状況

請求者ご本人にご来所いただき、発病からの経緯を詳細にお伺いしました。

  • 1年ほど前に自宅で急に胸・背中に激痛が走り、総合病院に救急搬送された。
    急性A型大動脈解離と診断され、即緊急手術となり人工弁、冠動脈バイパス術を受けた。
  • 術後3週間の入院を経て、数カ月手術を受けた病院で経過観察のために外来受診していたが、半年ほどたったところで自宅近くのクリニックに紹介され、現在はその近医にて血圧コントロールや、人工弁に対する抗凝固療法を継続している。
  • 初診日時点は会社員(厚生年金加入中)で現在は休職中。発病前は工場内の仕事であった為に、同じ職務に戻れそうもなく将来も不安。
  • 人工弁を入れると障害年金がもらえるとネットで見たが、自分にも受給できる見込みがあるのか。

とのご相談でした。

  • 身体障害者手帳 1級所持

相談から請求までのサポート

心疾患による障害は、以下の6つに大別されます。
それぞれの区分に異なる認定基準が定められています。

  1. 弁疾患
  2. 心筋疾患
  3. 虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)
  4. 難治性不整脈
  5. 大動脈疾患
  6. 先天性心疾患

今回のケースは、①弁疾患および⑤大動脈疾患にあたり、その認定基準は以下の通りです。

①弁疾患

  • 1 級
    病状(障害)が重篤で安静時においても、心不全の症状(NYHA 心機能分類クラスⅣ)を有し、かつ、一般状態区分表のオに該当するもの
  • 2 級
    1 人工弁を装着術後、6ヶ月以上経過しているが、なお病状をあわらす臨床所見が5つ以上、かつ、異常検査所見が1つ以上あり、かつ、一般状態区分表のウ又はエに該当するもの
    2 異常検査所見のA、B、C、D、E、Gのうち2つ以上の所見、かつ、病状をあらわす臨床所見が5つ以上あり、かつ、一般状態区分表のウ又はエに該当するもの
  • 3 級
    1 人工弁を装着したもの
    2 異常検査所見のA、B、C、D、E、Gのうち1つ以上の所見、かつ、病状をあらわす臨床所見が2つ以上あり、かつ、一般状態区分表のイ又はウに該当するもの

⑤大動脈疾患

  • 3 級
    1 胸部大動脈解離(Stanford 分類A型・B型)や胸部大動脈瘤により、人工血管を挿入し、かつ、一般状態区分表のイ又はウに該当するもの
    2 胸部大動脈解離や胸部大動脈瘤に、難治性の高血圧を合併したもの

(注) 大動脈疾患では、特殊な例を除いて心不全を呈することはなく、また最近の医学の進歩はあるが、完全治癒を望める疾患ではない。
従って、一般的には1・2級には該当しないが、本傷病に関連した合併症(周辺臓器への圧迫症状など)の程度や手術の後遺症によっては、さらに上位等級に認定する(人工血管にはステントグラフトも含まれる)。

相談者様は、

①弁疾患について3級の「1 人工弁を装着したもの」にあたり、3級の認定基準を満たしておられます。
さらに上位等級の2級に該当するかどうかは、診断書に記載される所見の内容によりますので、診断書の記載内容を精査することと致しました。

⑤大動脈疾患について1の条件については、「人工血管(ステントグラフト)」を挿入されておられましたので、「一般状態区分表のイ又はウに該当するもの」に該当するかどうかがポイントでした。

ここで一般状態区分表とは何か、以下をご覧ください。

一般状態区分表

区分 一般状態
無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの
軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの(例えば、軽い家事、事務など)
歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の 50%以上は起居しているもの
身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの
身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

診断書の作成依頼をし、入手したところ、

  • 障害認定日においては「一般状態区分ウ」
  • 現在においては「一般状態区分イ」

という診断書の内容でした。

初診日において厚生年金に加入しておられましたので、3級に認定されれば少なくとも障害年金の受給可能性があります。
①弁疾患の「1 人工弁を装着したもの」に該当し、それだけでも3級に認められるものです。

しかし、心疾患は検査成績や具体的な日常生活等を把握して総合的に認定するとされていることから、発症から総合病院での手術、術後の経過、検査所見、その後の日常生活の様子などをじっくりとお伺いし、診断書にはできるだけ細やかに日常生活での支障具合を記載して頂けることを目指しました。

検査所見のデータとして心電図の検査結果を取り寄せた上、自覚所見、他覚所見をしっかりと診断書に反映していただけるよう、医師の診察の際細やかに診察していただけるようお願い致しました。

結果

障害厚生年金3級(年間約58万円)に決定。

結果

心疾患は、人工弁を挿入したことのみで3級を受給できるものですが、術後経過、異常検査所見、日常生活の状況、自覚、他覚所見の有無とその程度により上位等級(2級、3級)に認定されるケースもあります。

今回のケースでは2級には認定されませんでしたが、専門家としては最初から3級でよいという姿勢ではなく、さらに上位等級に認定される可能性を常に意識し、審査に臨む姿勢が求められます。

当事務所では4名の女性社会保険労務士が、相談者様のお気持ちに寄り添い、丁寧に聞き取りすることを心掛けております。専門家に依頼することで新たな道筋が発見される場合も少なくありません。是非一度ご相談にいらしてください。