癌(がん)
転移性と原発ではどのように取り扱いが変わるのでしょうか

癌の場合は主治医の見立てが「転移」か「同時多発」かを確認する

ご相談者

女性(60代)

傷病

  • 肺癌(脳転移)

状況(発育歴・治療歴)

  • 約5年前より右乳房にしこりがあるのを感じていた
  • 人間ドックで乳癌健診を合わせて実施したところ、右乳房に腫瘍が確認された
  • 病院を受診、MRI、CT検査、PETを行ったところ、右肺にS3腫瘍が見つかりました。乳癌と肺癌はそれぞれ原発であるとの診断
  • 肺癌治療を優先し、切除手術を行ない、術後の状態は良好で3年間は特に異常もなかった
  • しかし、その後、脳転移が判明、手術を行い、抗癌剤治療および放射線治療を現在まで継続
  • 倦怠感、吐き気、食欲不振等の体調不良が続き、また、足の筋力が低下し歩行困難な状態となった

ご相談の内容

乳癌と肺癌はそれぞれ原発であるとのことだが、障害年金ではどのように認定されるのか

転移性の癌は、原発とされるものと組織上一致するか否かで「相当因果関係あり」か「相当因果関係なし」かが判断されます。

相当因果関係とは?
前の疾病が無かったら後の疾病が起こらなかったであろうと認められる場合は相当因果関係ありとして、前後の傷病を同一傷病として取り扱います。

癌の場合は主治医の見立てが「転移」か「同時多発」かを確認する必要があります。

相談者様の場合、乳癌と肺癌はそれぞれ原発であるとのことですので、乳癌と肺癌は「相当因果関係なし」として別傷病と取り扱われます。
ちなみに脳転移については「転移」ですので、肺癌と「相当因果関係あり」として同一傷病と取り扱われます。

肺癌、脳転移による障害年金の請求はどの診断書を提出すれば良いか

癌による障害年金は、原則として下記の診断書を提出します。

  1. 外部障害がなく、全身衰弱が主な症状の場合
     その他の障害用の診断書
  2. 外部障害が主であり、全身衰弱は顕著でない場合
     外部障害に対応する診断書
  3. 外部障害も全身衰弱もある場合
     その他の障害用の診断書と
     外部障害に対応する診断書
  1. 外部障害がなく、全身衰弱が主な症状の場合
     その他の障害用の診断書
  2. 外部障害が主であり、全身衰弱は顕著でない場合
     外部障害に対応する診断書
  3. 外部障害も全身衰弱もある場合
     その他の障害用の診断書と外部障害に対応する診断書

外部障害とは、上肢や下肢の切断、喉頭全摘出による言語障害、脳や脊髄への転移による肢体障害、癌による抹消神経障害、抗癌剤による中枢・末梢神経障害等の外部障害のことを指します。
全身衰弱とは、癌そのもの、または抗癌剤・放射線治療等による副作用である倦怠感、悪心、嘔吐、下痢、貧血、体重減少による全身衰弱が主な症状である場合をいいます。

相談者様の場合、抗癌治療の副作用による倦怠感、吐き気、食欲不振等の症状のほか、脳転移による歩行障害もあるため、その他の障害用の診断書と肢体の障害用の診断書の二枚を提出されるのが良いです。

ご相談をお受けして

癌で障害年金を申請する場合は「腫瘍マーカーの結果、ステージまたはグレード、治療内容、血液検査、画像検査、身体所見、体重など」を診断書に記載されることが重要です。

また、日常生活能力の欄は日常生活の制限について具体的に診断書に記入してもらうことが大切です。

癌の場合は短期間で急激に病状が悪化するケースが多いため、障害年金申請をお考えの場合は早めにご相談いただければと思います。