障害年金の受給に立ちはだかる高い壁

年金手帳

「年金は老後のためだけではありません」。これは、国が若年層への公的年金加入を呼びかける際のうたい文句となっています。実際、ケガや病気で障害を負った人を対象とする障害年金は、現役世代でも受給する可能性のある年金です。

しかし、制度の認知度が低いためか、請求漏れが起こりやすく、請求後も受給の可否や金額をめぐって思わぬ壁にぶつかるケースも多いのです。

障害年金は申請主義

18歳の時に交通事故により右足膝下を失い、30歳になってから障害年金の障害等級2級に該当することを知り、申請をした――。

こんなケースを想定してみましょう。年金の時効は5年ですから、20~25歳までに受給できたはずの年金利益を取り戻すことはできません。逸失利益は、2級779,300円の5年分で、約400万円に達することになります。

逸失利益

2級779,300円 × 5年 ≒ 400万円

公的年金は「申請主義」ですが、老齢年金では58歳には「年金加入記録のお知らせ」、年金が受け取れる年齢には「裁定請求書」が届くなど、保険者からの注意喚起があり、報道等によりその存在は広く認知されてきています。しかし、障害年金にはこのような仕組みもなく、制度の存在を知らない方が非常に多いです。

障害年金の対象自体はかなり幅広く、視力や聴力はもちろん、精神や肢体の障害、内臓疾患まで含まれます。また、腎不全で人工透析を受けている人やがん患者なども受給できる可能性があります。

公的福祉サービスを受ける際に必要な「身体障害者手帳」の等級とは、基準が異なることにも注意が必要です。対象自体が幅広いゆえに、請求漏れを起こしているケースも多いのです。

あいまいな等級認定と医師の不慣れに問題も

公的年金の中でも、適切な書類を準備し、適宜申請するのが最も難しいのが障害年金だといわれています。

障害年金の場合、初診日の証明が重要なポイントになりますが、医師法上のカルテ保存期間は5年であるために、病院を転々とした人などは記録が廃棄されていて初診日の証明ができないことが多々あります。

また、等級認定は、基準があいまいで、判断する人によってぶれやすいといえるほか、主治医が障害年金の請求に不慣れで認定の根拠となる診断書に重要事項の記入漏れなどのミスをしてしまっているケースも少なくありません。

これらのことを考えると、障害年金を正しく受給するうえで重要なポイントになってくるのは以下の点でしょう。

  • 診察券など、初診日の根拠となるものをきちんと保管すること
  • 申請者側が診断書の隅々まで目を通し、確認すること
  • 事前によく情報を集め、不本意な裁定を受けても簡単に受給をあきらめないこと

当事務所では、3名の社労士で障害年金チームを結成し、お客様一人一人に合ったサポートをさせていただきます。障害年金でお困りのことがありましたらお気軽にご相談いただければと思います。